第4章:弾性の利点
生物学的バネとしてのアキレス腱
Miller et al. (2014) の研究成果
ケニア人ランナーは、アメリカ人ランナーと比較して、下肢の筋肉量が少なく、体脂肪率が低い傾向があります。これはケニア人ランナーの優れたランニングエコノミー(少ないエネルギーで効率的に走る能力)に寄与している可能性があります。
重要な発見:アキレス腱の太さには明確な差は見られませんでした。これは、フォアフット走法がアキレス腱の肥大を必ずしも引き起こすわけではないことを示唆しています。
ふくらはぎのパラドックス
トップレベルのケニア人ランナーは、驚くべきことに、一般のランナーよりもふくらはぎの発達が小さい傾向にあります。なぜでしょうか?
筋肉よりも腱を優位にする
- 腱の短縮の程度が比較的大きく、筋腱複合体にて発揮される推進局面でのパワーの内、約85%は腱
- バネのような役割をもって弾性エネルギーを蓄積する潜在能力に関しては、筋線維よりも腱線維の方が圧倒的に高い
- 伸張局面にて筋が一緒になって伸張されれしまうと、筋によって発揮されたパワーが腱に伝達されず、腱の効率的な伸張が達成されない
- 入力として筋を使っている。如何に筋を使わないで腱のみにできるかが大きなポイント
腱優位の推進戦略
持久走においては、筋の代謝コストを最小化する戦略が、弾性エネルギーリターンを最大化する戦略よりも支配的である可能性が高い。効率的なランニングでは、ふくらはぎは力を「伝達」する役割を担い、着地の瞬間に等尺性収縮に近い形で緊張し、足関節を「固める」ことで、アキレス腱へエネルギーを蓄積させます。