イメージが身体の質を変える

一本歯下駄は、ただのトレーニング器具ではなく、身体と感覚を呼び覚ますための道具です。そして、感覚とイメージを統合する稽古の場でもあります。

同じ運動でも、イメージを伴えば質は大きく変わります。腕をただ上げる動作も「蝶を追いかける」イメージで流動性が増し、腹部の運動も「体内で二基のエレベーターが上下する」と描けば、立体的で精妙な身体感覚が芽生えます。

日常に感覚を取り戻すことの重要性

そのためには、感覚が豊かであることが大切です。肌で綿とポリエステルの違いを感じ、雑巾掛けはただのフラットな床を、起伏ある立体空間に変容させる。

「身体が準備できたから創造する」のではなく、身体を感じていること自体が、すでに創造につながっているのです。

だからこそ、普段から太陽の光に身をゆだね、裸足で砂浜を歩き、美味しいものを味わい、芸術に触れる──そんな理想的な営みを日常にすべて取り入れることは難しくても、それを大切に思う感性を持つことが必要だと考えます。

未来の身体を守る「転ばぬ先の下駄」として

アーティストとしての私は、この「イメージと感覚による変容」を創作と身体の両面で探求してきました。

一本歯下駄は、現役のパフォーマーが表現やパフォーマンスの可能性を広げるためだけでなく、未来の身体を守る体調管理の手段であり、「転ばぬ先の下駄」でもあります。