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なぜ今、文化身体論なのか
失われた身体文化
明治以降の西洋化により、日本人が持っていた独自の身体技法や身体観が失われました。かつての日本人は、身体を曖昧で全体的なものとして捉え、「間」と「型」を重視した動きを体現していました。
西洋化によるハビトゥス
現代の私たちは、無意識のうちに西洋的な価値観で身体を判断しています。このハビトゥス(身体化された傾向性)が、伝統的な身体文化の再現を困難にしています。
文化身体論の可能性
能楽に保存された伝承的身体技法と、下駄や足半などの道具に機能的に保存された身体文化を手がかりに、失われた身体技法を現代に蘇らせる実践的理論です。
文化身体論の理論構築
身体文化論の限界
従来の身体文化論は、失われた身体技法を分析・記述することに留まり、実践的な再現性を持ちませんでした。
なぜなら、西洋化によるハビトゥスの再生産を止める「界(Champ)」が不在だったからです。これにより、どれだけ伝統的な身体技法を学んでも、結局は西洋的な身体観に引き戻されてしまいます。
仮想的界としての能楽
能楽は600年以上にわたり、「型」によって身体文化を伝承してきた稀有な存在です。
能楽を「仮想的界」として頭の中に置くことで、実践時の価値判断基準を西洋的なものから伝統的なものへと転換できます。これにより、西洋化によるハビトゥスの再生産に歯止めをかけることが可能になります。
道具に保存された身体文化
日本の伝統的道具には「人間依存性」があり、使いこなすためには特定の身体技法が必要です。
足半や下駄、尺八などの道具を「対等な存在」として扱い、道具側からの働きかけを感じ取ることで、機能的に保存された身体文化を身体化できます。
「間」と「型」の獲得
身体感覚の二重構造を通じて、伝統的道具に内在する「間」を発見し、会得していきます。
この「間」を自身の競技や日常動作に応用することで、単なる「形」の模倣ではなく、叡智を内包した「型」として身体化することができます。
文化身体論の実践方法
仮想的界の設定
能楽を価値基準として頭の中に置き、動作や姿勢を判断する際の指針とします。
道具との対話
下駄や足半などの伝統的道具を使い、道具側からの働きかけを感じ取ります。
からだメタ認知
身体感覚をオノマトペで表現し、微細な体感の変化を意識化・記録します。
身体感覚の二重構造
身体内部の感覚と、道具を拠点とした外部の感覚を同時に感じ取ります。
「間」の発見
実践の積み重ねの中で、動きの中にある「間」を体感し、会得します。
「型」への昇華
獲得した「間」を自身の専門領域に応用し、独自の「型」として確立します。